お知らせ

「文字で語る」のコンテンツを開始してみました。
当面実験運用です。
メインのホームページに整理する前の情報をお送りします。
断片的にはなってしまいますが、お役に立てるようにがんばります。
執筆担当は荻野です。応援メッセージやクレームもどんどん待っています。(^^)

2012年7月4日水曜日

性能が良い材料を使うと建物の性能も上がる??


断熱材の問題です。

A:高くても性能に優れた断熱材
B:そこそこの性能で安い断熱材


太陽光発電の問題です。

A:高くても発電量の大きな太陽発電
B:そこそこの発電量だけど安い太陽光発電


性能の高い家づくりをしたいと思っているあなた。
上の例で、どちらを選びますか?





まず、それぞれの部位だけのことを考えた場合、同じ予算であればどちらの場合もBの方が性能の高い家ができます。
安い断熱材なら、同じ値段でとてもたくさん入れられます。

安い太陽光パネルなら、同じ値段で多くのパネルが載せられます。

どちらも、同じ値段のAの性能を上回ります。


しかし、現実にはそこまで単純ではありません。
断熱材の場合は、断熱材を入れるスペースが壁や屋根にあるかが問題になります。実際には、壁や屋根のスペースは限られますので、一定以上に性能を上げる場合は、やはりAの性能に優れた材料を使わないと実現できません。

太陽光の場合は、屋根のデザインが問題になります。多くのパネルを載せることのできる片流れの屋根などでは、Bの方法でも十分な枚数を載せられますが、一般的な切り妻屋根や寄せ棟の屋根では、多くのパネルを載せることが困難かもしれません。そのような場合は、Aの一枚あたりの発電量の大きなタイプを載せないとたくさんの電気を発電することは難しくなります。

この当たり前のことを、何となく誤解されている方も多いように感じます。
一般的に予算は限られていますので、その中でいかに性能を上げるかというのは、建築的な条件と部材の組み合わせが最大限効果を発揮するように考えます。

2012年7月3日火曜日

構造計算のメリットとSE構法


構造計算


構造計算って、想定外の力がかかった場合にどのように安全に壊すかを計画する事でもあります。
ほとんどの部位が100の力に耐えても、一カ所30の力で崩壊してしまう部分があれば、建物としては30の力にしか耐えられない建物という事になってしま います。それなら、全体をぬかりなく70の力でつくった方がコスト的にも耐力的にも良いよね。というのが構造計算です。もちろん、一気に倒壊しては危ない ので、壊れる順番や状況も想定します。

で、構造計算をしたから建物が強くなるわけではありません。構造計算によって、100の力でも大丈夫なように確認すれば、100以上、120の力でも大丈夫なように確認すれば、120以上になります。30の力で計画すれば30にしかなりません。

建築基準法で、50の力でOKな場合、実際には、部位によって70だったり100だったりする力に耐えられる場所もあるわけですが、それはもったいないと いう事で、できるだけ、すべての箇所で50の力すれすれで持つようにする、つまり、コストダウンを最大の目的にする構造計算もあります。(大規模な建物で は、こちらの要素が強く、結果、姉歯事件のような事も起きます。)

一般的に、構造計算費用は、構造の最適化による無駄を省く費用に対し、十分に見合う投資だと思われます。
しかし、小規模の住宅できわめて素直な設計ができるケースでは、経験とか、勘とかいったもので、数字的な裏付けはなくとも、ほぼ間違いない判断ができるケースもあります。そのような場合は、構造計算そのものが無駄という判断ができる場合もあります。

構造計算をする○○構法の強さ


ハウスメーカーやビルダーがPRする構法のうち、構造計算をしている○○構法が強いかどうかは、その計算によってどの程度以上の強度を目指す事に決めてい るかという運用上のルールにつきると思います。これは、企業の経営姿勢で決まる部分が大きいと思います。このハードルをあげれば全体コストは上がりたくさ ん売れなくなるかもしれないですし、ハードルを下げれば万が一の地震時に倒壊案件がでてしまいイメージを損なうかもしれない。

SE構法でも、日本で起こる可能性のある地震程度では倒壊しない程度に最低基準を設定しています。ただ、この設定レベルを十分とみるか不安とみるかは、価値観にゆだねられる部分もあるのかなと思います。

構法毎の強度の優劣の話をするのはある意味ナンセンスで、SE構法であれなんであれ「うちの建物は、より強い計算でお願いします。」と構造計算の数値を上 げてもらえば良いのです。当然、部材が太くなりコストが上がったり、計画に制限がでたりしますが、より強い建物になります。
「強さ」は構造計算をする事により在来工法を含め、構法に関係なくおおむねオーダーできます。(在来工法である程度精度のある構造計算を仕様と思うと、より強烈な制限がかかる上金額もはるので、一般的ではありませんが。)

一方、耐久性というものは構法にある程度左右されるものと思います。
こちらは、現実的な比較のできる環境が、現在のところそろっているとは言いがたい状況です。
各社の説明を良く聞いて、判断するしかありませんね。

SE構法で行われる構造計算とSE構法の評価


日本において木造建築の構造計算の王道は「木造軸組工法住宅の許容応力度設計」というものに沿ったものでしょう。これに対し、SE構法などは実験結果も踏まえた独自手法による計算になっているので、その部分に対し懐疑的な意見があるのも事実です。
前者が水銀体温計だとすると、後者はオムロンの電子体温計と言ったところでしょうか?後者の場合、オムロンのアルゴリズムを疑えば、その結果の数値も疑う事になり、本当にその体温なの?という疑問が生まれます。
実際、前者の計算ではSE構法よりさらにごっつい高コストな構造になる事が多く、それを正解とするのであればSE構法に懐疑的なる意見も理解できなくはないです。
しかし、それを言えば、壁倍率等で判定する在来木造は、おでこ体温計と同じようなものです。
おでこ体温計を信頼できるかどうかは、おでこの持ち主を信用するかどうかになり、より情緒的な判断に偏ってしまいますね。

いずれにしても、お金に糸目をつけないという前提で言えば、SE構法に限らずより強い建物をより確実な方法で作る方法はあります。いわゆる庶民ではない層の方々の家づくりでは、普通に使われています。

でも、自分を含め、庶民の家づくりでは金額を意識しないわけにはいきませんから、その中で、最も効率よく強度を高められる方法として、SE構法を支持しています。盲目的に安心だという気はないのですが、かなり良くできた構造でありシステムです。
在来工法でSE構法で行われている程度の構造計算をし、在来工法で同様の強度を出すことを試みれば、ずいぶん高いものについてしまいます。
何より、SE構法ではたゆまない改善も行われています。

ちなみに、SE構法の最低強度(SE構法を名乗る基準強度)でも、一般的にはやり過ぎという印象が強いですが、さらなる安心感を求める場合は、「SE構法でも、もっと強くして」とオーダーくだされば、さらに強い水準で構造計算されたSE構法になります。部材と金物代はたぶん増えますが、構造計算をするからこそ、無駄な部分に浪費されることだけはありません。

2012年7月2日月曜日

ゼロエネルギー住宅を考えよう

ゼロエネルギー住宅という言葉が、我々中小工務店にとってもテーマの一つとなりつつあります。
特に、原発事故に端を発するエネルギー問題に注目が集まる中、従来以上に切実な問題となっています。

ゼロエネルギー住宅の実現には、自宅での発電設備、すなわち太陽光発電が必須となります。

自分は、太陽光発電にはあまり積極的ではない立場を従来とってきておりました。家は、丈夫で長持ちが、何にもまして重要であり、快適設備などは、それに悪影響のない範囲で整備されるべきという思想が強いので、どうしてもある程度は屋根に負担をかけてしまう太陽光発電には、それほど積極ではありませんでした。
正直に言えば、リスクが高く、割に合わない仕事だったのです。

しかし、社会状況が変わり、ある程度しっかりと向き合って考えていかなくてはならない段階にきたなと感じるようになりました。

まず、第一に、なんといっても電気が足りないということを解消する責任が国民全体に課せられる世の中になってきたという事があげられます。一番電気を使いたい夏の暑い日に電気を使ってはいけないということを要請される世の中です。そのような状況にあって、ゼロエネルギー住宅を推進することは、お施主様利益にも公益にもかなうことです。

第二に、太陽光パネルの取り付け方法の進歩があります。数々のトラブルを経て、我々が見てもある程度信頼を置いても良いような取り付け方法がいくつも開発されつつあります。

第三に、薄膜方式など、安価な製造方法のパネルの性能向上と実証データの裏付けがそろってきており、実コストがずいぶん下がってきており、無理矢理の営業トークを言わなくても、元が取れる状況になっていることがあります。

そして、おまけですが、太陽光パネルの直流電気のまま、効率よく蓄電池に溜める方式など、普及が目の前の技術がいくつもあります。
今後は、そういった省エネの工夫に掛かる負担を、工夫のない家庭の電気料金などに上乗せさせるような仕組みも増えていくかもしれません。
この先、10年程度を視野に入れても、だんだんゼロエネルギーを指向していくのは間違いないと思いますので、そういう住宅が標準の時代になっても、対応できるようにしていきます。

現時点で、ゼロエネルギー住宅を計画することは、既に可能です。
図面にあわせて計算してみないとわかりませんが、およそ、230〜250万円程度の費用で、事実上のゼロエネルギー住宅になります。
これは、ずいぶん確信を持って10年程度で費用の元を取ることのできる水準だと思います。